【空き家を相続した場合どうすればよいか?】
全国的に空き家は増えており、空き家を相続する可能性は高まっています。
相続財産の中に空き家があった場合、どのような取り扱いをすればよいのか分からないとお悩みの方もいるのではないでしょうか。
今回は空き家と相続について、解説していきます。
(空き家とは )
空家等対策の推進に関する特別措置法での定義によると…
「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)という。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。(空家等対策の推進に関する特別措置法第二条)
空き家は現在、全国的に増加の傾向で、総務省が住宅の数や状況などを調べるため、5年に1度行っている「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は住宅全体の13.8%にあたる900万戸(出典:総務省 住宅・土地統計調査 令和3年版)と過去最多となったことが分かりました。つまり、約7軒に1軒が空き家という状況です。
又、空き家の取得原因は相続が半数以上を占めており、相続のタイミングで被相続人の居住建物が空き家となるケースが多いことが分かります。
(空き家を放置するリスク)
空き家には「特定空家等」といった分類もあり、空家等対策の推進に関する特別措置法での定義によると…
「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。「空家等対策の推進に関する特別措置法第二条二項」
(空家対策の推進に関する特別措置法では、特定空家等を市町村が判定し、所有者に対する助言、指導、勧告、命令及び行政代執行ができることとなっており、特定空家等に該当するかは各区市町村に確認が必要となります。市区町村ごとに対応が異なるため、該当するかどうかの確認は、最寄りの市町村窓口に相談することを推奨いたします。)
このように、空き家は周辺環境に影響を及ぼしたり、倒壊の危険性がある可能性があります。
それ以外にも、空き家の所有は、資産面においてもリスクとなります。
空き家を持ち続けていると固定資産税や維持費等のランニングコストがかかります。空き家となった建物は既に築年数が経っている場合も多く、時間の経過とともに建物はさらに劣化していくため、資産価値の下落は避けられないことが多いです。このため、持ち続けるほど売却が困難になるという恐れがあります。
(空き家を相続する時の対処法 )
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売却する
空き家自体に資産価値がある場合、売却を検討しましょう。
売却した金額は、所得税の対象となりますが、売買後は固定資産税などのランニングコストもかからず、建物の管理の必要がないため、資産としての運用などを考えていない場合は早めに売却した方が将来のリスクを減らすことができます。
また、相続の遺産分けの段階で、主な相続財産が空き家しかなく遺産分割協議がまとまらない時は、空き家を売却しての換価分割も検討してみましょう。換価分割は空き家の売却代金を相続人で分け合う分割方法ですので、全員が納得できる遺産分割が可能になります。
2、貸す
空き家を賃貸用住居として貸し出すことも選択肢のひとつです。
賃貸として貸し出すことができれば毎月家賃収入を得ることができますが、賃貸として貸し出せる状態にするため、家屋をリフォームやハウスクリーニングする必要があり、初期費用がかかるケースもございます。
また、貸主責任が発生するため、居住やインフラに関するトラブルが発生した場合は貸主としての対処が必要となる場合もあります。
3、住む
自身の居住用不動産として、相続した住居を活用することもできます。
相続した空き家の所在地によっては、売却や賃貸が難しい場合があります。
自身の居住用建物、もしくはセカンドハウスとすれば、所有を続けながら、特定空き家の指定を回避することができます。
さらに、セカンドハウスは固定資産税軽減の対象となる場合があります。ただし、適用条件が限られているため、事前に税務署や市区町村に確認してください。※税理士へのご相談を希望の場合は、弊社提携税理士をご紹介しますのでご連絡ください。
4、相続放棄する
相続放棄は、被相続人の相続財産を相続する権利の一切を放棄することをいいます。
相続放棄をする場合、被相続人が亡くなったことを知るなど、自身が相続人になったことを知った時から3か月以内に、手続きをする必要があります。
具体的には、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」を必要書類とともに提出しなくてはならず、その後、「相続放棄申述受理通知」を受ける必要があります。
相続放棄することで空き家は相続しなくてよくなりますが、
「空き家を相続したくないから」という理由だけで相続放棄をすると、他の財産も相続できなくなりますので、ご注意下さい。また相続放棄をしても、空き家については一時的な管理義務が発生する場合もございます。
5、解体する
一度更地にしてから、売却やその他の活用方法を考える選択肢があります。
土地のみでの売却は、土地の上に古い家がある状態での売却よりも買い手がつきやすい場合があります。しかし、解体費用は高額になってしまう可能性が高く、一般的な木造住宅であっても100万円以上が相場であるため、コストがかかる点に注意が必要です。
土地で保有している場合は、住宅用地の特例が適用できなくなるため、固定資産税が高くなる点にも注意しましょう。
6、寄付する
土地の売却が見込めない場合などに寄付を検討することも可能です。
寄付先としては、自治体・個人・法人の3パターンが考えられます。
自治体は使用する目的がなければ寄付を受け付けない場合があるので注意が必要です。ただし、一部の自治体では、一定の条件を満たすことで無償で寄付を受け付けています。空き家のある自治体の制度について事前に調べておきましょう。
寄付の際にも、相続時と同様、登記は必要になります。登記費用は、登記の際に必ずかかる登録免許税のほかに、登記の申請を司法書士に依頼する場合は、その費用も必要です。ただし、寄付を受け付ける団体によっては、登記費用を負担してくれる場合もあります。例えば一部の自治体では、地域活性化の一環として、寄付時の登録免許税を免除する制度を設けていることがあります。事前に条件を調べておきましょう。
7、隣の家へあげる
相続した空き家に資産価値がない場合は、隣家への贈与を検討するというのもよいでしょう。物置などに使用してくれる可能性もあります。
ただし隣家へ贈与をする場合は、事前に相続登記が必要となりますし、贈与契約書の締結も必要となります。贈与契約の成立後は、再び空き家の所有者移転登記をしなくてはなりません。
8、相続土地国庫帰属法を適用する
「相続土地国庫帰属制度」は令和5年4月27日からスタートした新しい制度で、相続した土地を国が引き取る制度です。
制度内容としては、相続などによって土地の所有権などを取得した者が法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて承認を申請し、法務大臣から承認をもらう事で国庫帰属が認められる手続きです。法務大臣は、承認申請された土地が、通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたものに当たらないと判断したとき、承認します。
土地利用ニーズの低下などによって、土地を相続したものの土地を手放したいと考える人が増えた現況に沿って、所有者不明土地の発生を予防するために創設された新たな制度です。 ただし対象外の土地もあります。
<申請が却下される土地>
・建物がある土地(建物撤去後は申請可能、撤去費用は所有者負担)
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・第三者の利用が予定されている土地
・土壌汚染のある土地
・境界が不明確な土地や所有権などに争いのある土地
<承認が受けられない土地>
・一定の勾配や崖があり、管理コストのかかる土地
・土地の管理や処分を阻害する有体物が地上にある、または除去を必要とする有体物が地下にある土地
・隣地オーナー等と訴訟しなければ管理処分ができない土地
・その他、通常の処分に高額な費用や労力がかかる土地
(まとめ)
今回、空き家を相続した場合の対応について解説しました。
空き家の相続では、相続開始前からどのように取り扱うのかを検討しておくことがとても大切です。放置することで、資産価値の下落や税負担、周辺環境への影響などのリスクが広がる可能性もあります。
しかし、どの選択肢がベストなのか、自分だけで判断するのは難しい場合もあります。
相続に関する手続きは複雑で、多くの選択肢があるからです。
私たち行政書士は、相続手続きや空き家の活用に関する法的なアドバイスをわかりやすくご提供し、最適な解決策を一緒に見つけるお手伝いをいたします。また、必要に応じて税理士や司法書士、不動産会社など他の専門家とも連携し、ワンストップでのサポートをご提供いたします。
「何から始めれば良いかわからない」と感じたら、まずはお気軽にご相談ください。どんな小さなことでも、私たちが親身にサポートいたします。